約一年前に購入してもうこれしか使ってないんじゃないか、そんな鞄がある。
POSTALCO(ポスタルコ)の「バックパック LT」という小ぶりなデイパック。
使用されている生地についてはハンマーで叩いたような立体的な見た目からライトハンマーナイロンと名付けられた。ナイロン100%の生地ではあるがアウトドア風味は皆無で落ち着いた佇まい。
触った感じはX-Pac生地やリップストップに近い雰囲気、と一瞬思ったがそれらが生地に均一性が高いのに対し、こちらはランダムな凹凸があり表情が豊かでザラザラ感がある。結局あんまり見たことない生地だなー和紙みたいだなーとも思ったり。
強度や高級感で売り出した「ナイロン」はよくあるが、この素朴な風合いを目指したものは他にあまり知らない。
ボディに対して大き目の2つのハンドルがデザイン的にもアクセントになって好きなポイントだ。またそのハンドル部分と肩紐、背面上部で使用されているシュリンクレザーが全体の雰囲気を引き締めて良い。高級感がある訳ではなく、控えめながらもしっかりと自己主張できている良い鞄だと思う。ナイロン生地であることから当然軽いのも魅力の一つ。
また、この鞄は橋梁から制作のヒントを得たようだ。
橋は、「自重で壊れないように骨組みを覆うことなくむき出しにすることで軽量化を図りながら強度を高く保つために重さを分散させる構造を取る」らしい。
この「軽量化と強度のバランス」を”橋”からヒントを得て鞄のデザインと構造に取り入れるあたりも素敵な話だと思うが、補強のために使用している橋の支えライクなテープが最終的に鞄のデザインとしても機能しているあたりが良いなと思う。
下の写真の通り、内側にこのクロスされた補強テープが縫い込んでありそれ自体も味があって格好良いのだが、さらに前から見た際に、その補強テープを止めるために縫い込まれたステッチが入ることで、そのステッチに沿って自然なパッカリングが発生するのがこれまた良い。”のっぺらぼう”になりがちなデイパックの前面に自然にデザインが入る、機能性を高めるために施した処理がデザイン性を高めていることに美しさを感じる。
また鞄を使用する際に服や靴との相性を考えるが、この鞄は守備範囲が広島のディフェンス陣のように広く、実際にウール地のセットアップのスーツを着るとき以外はこの鞄を使ってる。というか寧ろこの鞄を持つことのできるよう、服や靴でバランスを取っていることもある。
よく界隈で言われる「男の鞄は良いものが無い」みたいな話に納得しつつも、そもそも最近は男っぽい服装をしていないので必然的にこの鞄の使用頻度が増えてきているようにも思う。
最近はこの鞄を持つか、鞄を持たないか。そんな感じ。少々高いが良い買い物だったと一年使ってあらためて思う。