引分けはもう十分なんだが(9節札幌広島の話)

~直近のサンフレッチェ広島

札幌戦を振り返るのは少し億劫になる。この内容であれば勝たなければいけないと誰もが思う。今節は本当に「あとは決めるだけ」なシーンが多々あった。加藤、松本、、ゴールを決めてくれ。

Jリーグ公式HPより

札幌はミシャ式の攻撃時4バック+1アンカー+5トップのお馴染みの形。そしてディフェンスから繋ぐスタイルを取る。広島相手だとハイプレスを警戒して対戦相手はロングキックを選択することが多かった今季の中で札幌は珍しく繋ぐチームだった。

広島は繋ぐ札幌に対し前からハイプレスを掛けるが日本最強のゴールキーパー菅野がDFラインのパス回しに加わることで数で優位に立ちプレスを回避する。そして札幌の右ウイング近藤が高い位置を取ることで広島ウイングバッグの東を後方に押し下げ、同時に札幌の馬場が右サイドバック化して幅を取ることで広島のシャドー満田と距離を確保。馬場へプレスを掛けるには満田も東も距離がある。菅野はプレスの回避場所となっていた馬場へピンポイントでの浮き玉パスも見せていた。菅野には昨シーズンの開幕戦でも悉くセーブされたことが記憶に新しい。今節のパフォーマンスも流石だったし恐るべき40歳。

試合は徐々に広島がペースを掴む。ルーズボールに対してのアクションが広島の選手の方が早く、奪い取った瞬間に連動した攻撃が始まるので押し込むことができる。また札幌のシャドー2人が下がってボールを受ける動きを見せるがマークの塩谷佐々木が自由にプレーさせなかった。ミシャ式ではこのシャドーの振る舞いが重要であるため、良さを出させなかったことも広島が優位に試合を進めていた理由だろう。

しかし先制点は札幌に入る。塩谷の寄せが甘いのか、はたまた中野がもっと寄せるべきだったのか、単純に不運で片付けて良いのか、その辺は難しい問題だ。

広島が攻撃する際には札幌は5バック化してマンツーマンは前節の福岡と同じ。1人が1人をマークするのでマークのズレを生じさせる必要があるが、後方ポジションから走り込む松本の動きを札幌の選手が捕まえることできず何度もチャンスを作った。17分の塩谷から松本へのパスは素晴らしかったがあと数センチのズレだろう。そして加藤も何度か決定機があった、あとは決めるだけのこと。後半開始早々に中野のコントロールショットで同点に追いついた。彼の存在がここまで大きく欠かすことのできない選手になった。

その後は終盤までは札幌にシュートを打たせない広島が優勢の展開ではあったけれど勝ち越し点は奪えず、逆に残り15分くらいからは広島の体力の衰えが影響し札幌が押し込むシーンが増えてお互いチャンスを作るオープンな展開に。しかし試合は動かずドロー決着。

決定力不足。。点は入るときには入る。

「あとは得点だけなんだよ」この試合見終わって率直な感想がそれ。簡単に見えるシュートでも100%決めれる選手なんていない。技術だけでなく運も必要な世界の中で言われる、決定力不足。

昨季の序盤戦は可能性の低いシュートがやたら多く”決定機”と言われるチャンスが少なかった。得点が少なくても仕方ないと思える内容の試合が多かった。

今季はピエロス大橋加藤の3人にウイングバック中野が加わりゴール前の迫力は段違いに上がりシンプルなセンタリングやセットプレーからも点を取れる雰囲気があるし、シャドーやボランチが走力活かしポジション変えながら追い越してポケット狙うスタイルも健在。攻撃の良化は間違いなく決定機も多い印象だ。

だから、点がもっと欲しいし、決めていれば勝てた試合もあっただろう。

加藤が点が取れない試合が続くが、彼はシュートが上手い選手であることは去年の活躍を見れば分かる。そのうち得点は取れる。そこまでは悲観はしていない。

再び、勝てなかった試合(8節福岡広島の話)

〜直近のサンフレッチェ広島

8節福岡戦を振り返る。

福岡はとにかくも今季新加入のイラン人ストライカー、シャハブザヘディ(187cm)目掛けてボールを供給。ザヘディが競り合った後のセカンドボールを奪い攻撃をする。「広島のハイプレスを防ぐ」という意味でもこのロングボール作戦が有効であるので、福岡の攻撃は交代で退くまで”終始ザヘディ”であった。

試合はザヘディに先制点を決められる。が、すぐにキャプテンの同点ゴールで嫌なムードを払拭してからは広島のリズムで試合ができていたとは思う。”ザヘディ”の点を取りそうな雰囲気は存在し続けてはいたが。

内容的には勝てた試合であったが、アウェイで追いついてのドローということで最低限の結果。今季これで引分けが4試合目。神戸戦以外は勝てる試合であっただけにもったいない。優勝するには、「勝ち切ること」が当たり前だが重要。つまり得点力のUP。

Jリーグ公式HPより
ミラーゲームの戦い

3試合連続のミラーゲームとなった今節。「普段の練習の紅白戦はミラーゲームになるから慣れている」そんな言葉が広島の選手から聞こえる。確かにマンツーマンのハイプレスが信条の広島にとってはマークする相手が分かりやすいのはもちろん、ミラーで来たらこう崩すみたいなイメージの共有ができているので上記のコメントが出たと推測する。直近の試合でも相手からのプレッシャーがあるにも関わらずスムーズなコンビネーションプレーで前進する場面もあったのでそう思った。

以下は広島と福岡の基本配置、マンツーマン。

ウイングバックからフォワードも ”斜めのグラウンダーパス”

G大阪戦でもよく見られたが、ウイングバックがら前線の選手に斜めの角度でグラウンダーパスを供給するシーンが増えた。特殊な戦術ではなく「これでいくぞ」みたいな堅苦しい話ではない。後方から走って攻撃に加われる松本泰志のような選手と、前線にキープでき且つフリック等の小技も上手い選手(=大橋、ピエロス、加藤)が揃っていることで、この辺のパス回しの成功率は今季はUPしているなと肌感覚で思う。特に8分30秒くらいのシーンは越道がボールを持った瞬間に、加藤・大橋・松本の3人のビジョンが共有されていて良いプレーだと思った。

上記場面では味方の選手が動くことで生まれるスペースを連続して有効に使うということができていた。これぞスキッベ広島の攻撃と言った感じ。

また、この”前方斜めに入れるプレー”はどちらかと言うと左サイドの東からが多い。右サイドで新井が出る場合もこういうパスとコンビネーションで崩すシーンが増えそうだ。

 

組み立て時の「プラス1人」

マンツーマンでマークされると、自分の近くにすぐ相手がいる状況となるので、パスやドリブル等思い通りのプレーが難しくなる。対峙する相手との力関係によるが。

以下、マンツーマンでマークされる状況で広島がボール保持し前進を試みる場面で、味方の選手が「プラス1人」多くなる状況を作り出すことができた。

前線の加藤が1列落ちて中盤で数的優位の状況を作った訳だが、加藤の動きに対してマークしていた井上が何故ついて行けなかったのか。

井上はこの試合では終始加藤をマークしていて、加藤が一列落ちても激しくチャージしていたが、松本の効果的な攻撃参加によりピン留めされた形となったから。

 

 

さいごに

冒頭にも書いたが今節は「勝てる試合」であったと思う。福岡のシンプルに強力なFWにボールを供給する戦い方に確かに”一発を受ける”可能性があったが、広島の方がやりたいサッカーを実現していたように思う。引かれたマンツーマンDFに対して可能性を感じる攻撃ができたので、そう思う。

選手のプレーについて、まず中野。相手の強力FWに対して十分戦えていて競り合いではほとんど負けておらず、時折見せるシャドーへの縦パスは荒木にはない武器だなと。

加藤が不調というか、動きはいつもの加藤だが、味方とのほんのちょっとの”ズレ”が多かったと思う。気持ちの問題かもしれない。はやく得点がほしい。

控えで入った志知に関しては少し厳しい内容だった。志知は左足のクロスボール特化型の選手であることは周知なはずだが、コンビネーション狙ったショートパスを出し失う場面が何回かあったので、クロスの受けて大橋ピエロスが揃うとき以外は難しいなと思った。

プレスを掻い潜るために(7節広島湘南の話)

〜直近のサンフレッチェ広島

湘南との試合を振り返る。

後半早々に1人退場で少なくなった湘南を一方的に攻める展開となったが、前半は湘南のハイプレスによってDFラインからのビルドアップが封じられる場面も多かった。

1人少なくなった湘南は前線の選手を1枚少なくする形を取らざるを得ず、それは生命線であるハイプレスを失うことを意味するためかなり厳しい戦いになっていたと思う。そのため広島は何度もチャンスを作るが得点はPKと大橋の個人技の2点のみ。流れの中で崩しての得点が見たかったのが正直なところ。

Jリーグ公式HPより
湘南のハイプレス

強度の高いマンツーマンのマークによって広島は前半の途中まではかなり苦しめられる状況ではあったが打開するために工夫をする。

広島のビルドアップ。ポジションチェンジ、サイドで起点となるIH。

左サイドからの攻撃で何度かあった組立て。インサイドハーフ(IH)のどちらかがサイドレーンまで開いてパスを受ける。パスの出し手であった東と、大橋、松本が連動して前進する。マンツーマンDFの弱点であるポジションチェンジと細かいショートパスの連続で打開を試みた。以下の図は15分くらいのシーン。

 

 

その他にも、湘南のアンカー田中の脇のポジションにタイミングよく顔を出した松本に真横でボールを持っていた東が平行のパスを入れることや、左サイドで細かいダイレクトプレーを取り入れ相手のチェックが入るよりも早くプレーすることで守備網を掻い潜る場面は見られた。

軽症であってほしい川村

高額年俸の外国人選手4人全員が”OUT”な状況の中、前節では不動のCB荒木が離脱。CBの控え1番手のパリ五輪代表候補だった山﨑が今期絶望。もう一人のCBの控え候補松本大弥も怪我。そんなチーム状況の中で今節は川村拓夢が負傷による途中交代。

個人的な”代わりの利かない選手”として、塩谷、佐々木、加藤、満田の4名を思い浮かべるが、直近のアンカーポジションでの順応具合からこのメンバーに川村も加わろうとしていただけに軽傷であることを切に願う。

てか早くブラジリアン3名とキプロスのエース戻ってこい。。

最後に

中野が今節もCBで出場してくれてクリーンシート。ルキアンに苦戦する場面はあったものの、今、広島にとって最も重要な選手であることは間違いない。彼のレギュラーポジションであった右WBに最高の代役がいることでこのCBへのコンバートが実現したとも言える。怪我人が出始める前に、新井直人を獲得に成功した広島の強化部は本当に良い仕事をした。だが流石に離脱者が早く戻ってこないとここからの連戦が厳しいし、なにより早くベストメンバーでの試合が見れないことが残念だ。

 

 

 

無敗同士の対決(6節町田広島の話)

~直近のサンフレッチェ広島

さて水曜日の町田戦について書いておく。

Jリーグ公式HPより
広島警戒100%の町田

黒田監督の試合前インタビューからも広島を警戒していたことが分かるが、試合開始直後に視覚的にその”警戒”が分かった。町田は広島のシステムに合わせて3バック(5バック)の並びを採用した。広島とのミラーゲーム(対面の相手とマンツーマンになる)に挑んだ。

これまでも神戸が普段の自分達の形を崩してまで広島対策として3バック(ミラーゲーム)を採用してきたが、確かに広島のワイドバックをを前線に上げる攻撃に対しDF4枚では守りにくそうなチームが多く、3バック(=5バック)の方が単純にDFに人数が掛けられる分守りやすいし、選手のフィジカル強度に自信のあるチームであるならマンツーマンの形が取れるミラーの方が良いとするのは理に適っている。

嵌らない町田プレス

町田は前線3枚で広島の3バックにハイプレスを仕掛ける。町田の並び的には5-2-3。後ろの「5」は、広島のワイドバックも含めた5人をマークし、真ん中の「2」は広島の中盤の2人(川村と松本)をマークする必要があった。

しかし、川村がDFからのボールを受け取りに行くときに、柴戸・仙頭は川村に思い切ってマークに行けない。試合後インタビューで仙頭が語っていた「広島の前線の選手のポジションが気になった」という部分に答えがあり、満田や加藤が柴戸・仙頭のプレーエリアに落ちてくることでマークに迷いが生じた。

中盤選手のマークの迷い、チームとしては前線からプレッシャーを掛ける認識であったのに2列目が続けないという状況に陥った。プレスの連動性が欠けたことで広島の前進は容易になったことは間違いない。★町田の守備の狙いを外した。

セカンドボールは譲れない

町田はセンターフォワードのオセフンに向けてロングボールを当てる戦略を取った。オセフンが完全にキープする場面はなかったと記憶しているが、荒木や中野と競り合った後のボールの回収に関しては広島が優勢だったように思う。

町田としては、ロングボールを蹴ってセカンドボールを回収して速い攻撃を仕掛けたい意図が見てとれたが広島のDF陣は負けなかった。町田が「そうやってくる」と分かっていたからこそ、ボールを拾うための良いポジショニングができたし、球際の勝負で譲らなかったのだろう。★町田の攻撃の狙いを外した。

最後に

広島はボール保持の際には、松本が前節見せた効果的な走りでポジションを取りに行ったり、シャドーの落ちて受ける動きと新井・東のウイングバックのパスを出すタイミングが噛み合っていたり、大橋が頂点で頑張って起点になれていたりと良い部分が多かった。川村も組み立てのパス、ドリブルでの持ち運び、そしてプレスバックと良いプレーが多くあった。そして何より中野である。ウイングバックからセンターバックへ緊急変更を完璧にこなす。次節も中野がいれば大丈夫と思わせてくれる素晴らしいパフォーマンス。そして中野がいなくなるとウイングバックは誰よ、、新井直人。あぁ強い。補強してきた強化部の良い仕事。

「町田は勝利至上主義の良いチーム」みたいな噂が最近聞こえてきていたが、何をもってそう言われていたのか謎が深まったが、とりあえずは広島の圧勝という印象。

点が取れるぞ(3節広島鳥栖の話)

「2024-03-14 POSTALCOの素敵な鞄」という投稿の後半部分に書いていたサンフレッチェ広島関連の内容を切り取り再UPしました。内容は変えてません。

~直近のサンフレッチェ広島

Jリーグ公式HPより

鳥栖戦を簡単に振り返っておく。前節と同様のスタメンと配置で臨む広島。まずは基本戦術のお馴染みハイプレスが自陣で人数を掛けて組み立てる鳥栖に有効かどうかを見ていたが効果ありと言える。

例えば15分くらいのシーン。以下図の通り、前に前にスライド。塩谷が思い切って前に詰めることでパス先を限定。そして重要なのはカバーに満田が戻っていたこと。このリスクヘッジのできるボランチ満田を擁してはやく横浜FMとの試合が見てみたい。(ウイング対策どうするか見たい!)

鳥栖に前進を許した場面もあった。例えば21分の場面。これは図なし。鳥栖の左サイドバックの丸橋が内側に入り長沼がライン際まで幅を取る。さらに逆サイドから堀米が2人のフォローに入り密集で△をつくり前進を許した。ただこの攻撃はそこまで有効ではなく、結局「(前線から中盤に加わり)人数かけて組み立てる=攻撃の人数が少なくなる」なのでDFラインが3枚+アンカー1枚が残っている広島に対して有効打ではないと思った。

 

むしろヒヤッとしたのはMヒアンがサイドをスピードでえぐってシュートまで行った場面。広島の弱点をつかれた。広島の3バックに対してスピードあるウイングが1vs1を仕掛けられると対応が難しい。この戦い方をする以上は仕方ないがやはり恐いな。

 

広島の先制点についても触れておく。前節のFC東京戦はクロス攻撃が多く、それでも去年から比べて得点の匂いがすることは前回書いたと思う。ただ今のメンバーで地上戦で崩す形も見たかったところで今節の1点目は素晴らしい地上のコンビネーションから生まれた。

まず広島のディフェンス3枚のビルドアップに対して鳥栖も3枚でプレスを仕掛けたところから始まる。鳥栖の福田は中盤からプレスを仕掛ける形となり距離のあるプレスは遅れが生じる。余裕をもって佐々木から大外の東を経由し平行位置にいる満田にパスが繋がる。

 

そこからは以下の①②③を体現した素晴らしい得点だったように思う。

◆①ディフェンスを広げる

サッカーにおいて攻撃の目的はゴールを取ること。だからディフェンスはゴール取らせないように4人なら4人が等間隔に並びゴール前を固めるのが定石。攻撃側はそのディフェンスの間を突くために4人の間隔を広げる作業をする。つまりディフェンスを外に釣り出す。

⇒加藤の大外に開く動き、加藤が再び内に動けば大外に開くピエロス。

◆②ディフェンスのマークを迷わせる。

ゾーンディフェンスが整備されていないマンツーマンのディフェンスでは、一人ひとりに当然マークする相手がいる。「あなたのマークは彼です。」という状態がずっと続くと勿論マークは簡単だ。ではオフェンス側がポジションを変えるようにローテーションした場合、ディフェンス側に少しの迷いが発生し相手へのチェックに遅れが発生する。

⇒加藤・東・ピエロスローテーションで魔法陣完成。

◆③配置の優位性を活かす。

配置的な優位性を活かすこと。5トップに対して4バックで守るとボールと逆サイドの一番外側のレーンの選手にマークが及ばない。

⇒左サイドで作って右サイドで仕留める。

 

得点を決めた塩谷はナイスシュートだったし満田の斜めに差し込んだパスもスキルフル。このガチムチ感あるメンバーでこういう事ができるんだなと感心してしまった。ラインブレイクした訳ではないが意図ある崩しで得点が奪えた。やはり今年は強いんじゃないか🐻

機能した”走り屋”(5節広島G大阪の話)

~直近のサンフレッチェ広島

J1第5節の広島vsG大阪の振り返り。

Jリーグ公式HPより

広島のスタメンと配置が変更となった。センターフォワードのピエロスが前節の怪我のため外れ、代わりに松本泰志がスタメンを掴んだ。

松本泰志の起用で走りの成分多め

今シーズンはピエロス+大橋+加藤のフィジカルな優位性のある選手を前線で起用していたため、昨年までのスプリント、走力を活かして前進する攻撃は少なくなっていたように思う。

しかし今節はスタメン抜擢の走り屋の松本がまぁよく走った。特に後半はネタラヴィも混乱の繰り返されるダイアゴナルランが効果的だったように思った。

例えば、満田と加藤の2人のシャドーが相手サイドバックを引き付けながら外側へ移動すると、中央のセンターバックサイドバックにギャップが生まれるのでそこに走り込む走り屋。

また前線がDFラインの裏でパスを受けようと走ることで相手DFラインは押し下がる。そうなると中盤のラインとの間隔は広がる。その広がったスペースに後方から現れる走り屋。

松本のプレーと、そのプレーを引き出す味方の選手のプレーによって後半はG大阪の守備が後手に回っていた印象で、神出鬼没の走行が機能する試合を久々に見れて良かった。

春は卒業の季節

広島の走り屋(走力やスタミナが秀でている選手)と言えば川村拓夢も忘れてはいけない。リスク犯して前進するそのプレーはスキッベ監督の広島のスタイルの象徴的な選手とも言える。日本代表の森保監督曰く「彼のBox to Box のところは評価している」らしいので、やはり推進力・スタミナは日本代表クラスなのだろう。逆に弱点はビルドアップのところと言われていたりもする。(しかし、サッカー用語て意味不明。ボックストゥボックスて何だよ。笑)

そんな走り成分多めの川村だが、この試合では最近は満田の役割であるアンカーいわゆる”ヘソ位置”に入ってビルドアップを上手くコントロールしていたと思う。ディフェンスからボールを受けサイドへの展開。サイドから受け取って逆サイドへ等の繋ぎ役を悪目立ちせず淡々とこなしていた印象だ。走り屋からは一旦卒業して新境地を見せる川村、日本代表を経験して変わっていくあなたの未来は縛れないのかもしれない。

大一番を終えて(4節神戸広島の話)

~直近のサンフレッチェ広島

今週はJ1リーグの神戸vs広島の振り返り。

昨年J1王者の神戸と今シーズンここまで首位の広島の一戦で個人的にはとても見応えがあった。ロングボールを蹴り合うシーンが多く点も入らなければシュートも少なかったが、90分通して緊張感ある試合でDAZNでのディレイ視聴ながら汗かいた。感想を整理しておく。

Jリーグ公式HPより

広島は前線から「ハイプレスを仕掛けてボールを奪い早く攻める」という十八番スタイルをこの試合でも試みる予定が見事に不発。神戸側の広島対策とも取れるシステム変更と、大迫武藤山口宮代の圧力に負けて上手くいかなかった。

試合後のインタビューで広島の中野が「プレスに行くかを躊躇った」と言葉を残したが、中野としては相手の左サイドバックにプレスに行くイメージがあったが、蓋を開けてみると神戸はDFラインから組み立ての際に酒井が右サイドの高い位置を取ることでDFラインは実質3枚となる形を採用。そのため本多へのプレスに行くと後方の広瀬が空くことになり、塩谷がジャンプして詰める形で止めることができれば良いが。。。中野が迷ったのはそんな感じだろう。

思えば神戸のような3バックでビルドアップを行う相手と対戦することは今季初めてだった。浦和戦でアンカーのグスタフソンにシャドーの1人がマークしてから「アンカーポジションにはシャドーの1人がつく」という共有がチーム内でされていたのであれば、この神戸に対しては1フォワード+2シャドーで相手の3バックにつき、アンカーの扇原にはボランチの1枚がつく。そしてボールと反対サイドのウイングバックは内側に絞る。こっちの方がプレスの強度は上がったとは思う。サイドチェンジには注意だが蹴らせなけば良い。

 

神戸の攻めで言うと入れ替わり攻撃も脅威だった。入れ替わり攻撃と勝手に名付けたが、例えば大迫が最前線から広島の荒木を引き連れて中盤に落ちる動きに合わせて、中盤から宮代が大迫のいたスペースに進入する(偽9番的な)。この2列目から前を貪欲に狙う攻撃に対して広島は守勢に回らされることとなり、ボランチ2人が山口と宮代のマークと後方の守備を意識することが最優先となったように映る。これもボランチが神戸のアンカー(扇原)までマークできない要因だと思った。

結果的にプレス行けず、後方からロングボールを大迫に向かって供給され続け後半あわやと言う場面を作られたが広島の大迫が防いだ。

 

広島のボール保持の場面でも神戸のディフェンス強度は高かった。2節のFC東京戦や3節の鳥栖戦では主に左サイド、佐々木-東、そしてボランチの満田が三角形を作り、満田は余裕を持ってパスを受けプレーしていた。しかし流石の神戸。満田へボールが渡ると宮代(山口もあったか)が詰め満田に余裕を与えない。プレスを掻い潜るトライも行っていたが奪われるリスクを考え広島も前線の選手に向かってボールをいつもより高頻度で放り込んでいた印象を持った。

 

前年王者にAwayで「引分け」は結果としてはOK。ただし試合内容としては、広島のハイプレスと5トップ風味な攻撃をシステム変更で対策しつつ、普段通りシンプルな前線に放り込む攻撃を展開していた神戸の方がプラン通り進んでいたように思う。昨年の広島HOMEでの同カードで4バック神戸に対して広島が優位に試合を運んだ経験から来てるんだろうなと。

 

こんなところかな。

 

新井直人選手、ようこそ広島へ。