いよいよ開幕を迎えるJリーグ。
推しチームのサンフレッチェ広島は昨年まで2シーズン連続のJ1リーグ3位。昨年の終盤戦、リーグで1番強いチームは贔屓目抜きに広島だったと思う。
スキッベ監督3年目となる今季は積み重ねてきた広島の代名詞「ハイプレス」とそれを可能とする「鉄板の3CB」は健在で。さらにマルコス・加藤・小原・大橋の加入でアタッカー陣も充実。足りない要素として強いて言えば攻撃の「組立て」ができるセントラルミッドフィルダーが1枚欲しいところだが、満田と野津田を上回る選手となると日本代表クラスとなるので資金的にも難しいのだろう。
広島は過去3度シーズンで優勝を成し遂げたが、どの年も開幕前に「優勝」を意識できたことは個人的にはなかった。が、今年は言わせてもらう、優勝できると。
広島の戦い方について自分中で整理する意味合いもあり、開幕直前になってしまったが書いてみようと思う。
試合中は以下の4局面のいずれかの状況にチームが置かれることとなる。
①守備から攻撃への切替(Positive Transition ポジトラ)
②ボール保持≒攻撃
③攻撃から守備への切替(Negative Transition ネガトラ)
④ボール非保持≒守備
◆戦い方のベースはやはり「ハイプレス」
広島の戦い方で特徴があるのは、4局面の内①③の攻守の切り替えの部分だ。つまり相手ボールになったとき、局面③前線から「ハイプレス」を掛け、局面①奪ってショートカウンター。やはり今季もベースとなるのは過去2年と同様に、ボールを保持して組織的に崩すことや(局面②)、DFラインを下げて(あるいは5バックにして)守りを固めること(局面④)ではなく、攻守の切り替えの部分にあることは間違いないだろう。
広島のハイプレスは特に決まり事のようなものは無い(と個人的に見ている。)フランクフルト式の523プレスみたいな表情を見せることもあれば、いや、ボール保持者に我武者羅に突っ込んでいるだけ?と見えることもあるため「対戦相手」によって、あるいは「対戦相手の出方」によって試合中に選手間で調整しながら実行しているように思う。スキッベ監督は「最後の部分は選手に任せるスタンスを取っている」と野津田がコメントしていたように、ガチガチに戦術的な指示をしない。
その「ハイプレス」だがハマるときもあればハマらないときもある。広島のハイプレスは基本的に対面の相手をマークするため自分のマークする相手が特定できればハメることが比較的容易。
下図のように広島は矢印方向の相手にプレスを仕掛ける。
ハマらないケースの例も挙げておく。マークする相手が特定できない場合だ。
相手が試合中「組み立て(ビルドアップ)」の方法を変更した場合など、マークにズレが発生しプレスに「いくべきが、いかないべきか」と迷いが発生。昨年も散見された状況だ。試合前、あるいは試合中に相手が仕掛けてくる「形」を想定しシミュレーションを行うべきに思う。
上の図では、赤の左サイドバックが内側に入り、対面の紫の中野と大橋の中間にポジションを取り、赤の左ウイングが大外に開いた状況。中野は左ウイングを意識が向くが、対面の左サイドバックにはプレスにいくべきか?1列前の大橋がいくべきか?2人の認識は一致しているか。もし2人に認識違いがあり迷いが生じた場合はプレスが遅れ相手に前進を許すリスクが大きくなる。
◆ボール保持が変化?シンプル5レーンアタック風味。
昨シーズンの前半戦、広島の攻撃は「ポケット」を奪うことを執拗に狙った。
センターフォワード(ナッシムベンカリファ)がサイドで起点を作り、インサイドハーフの2枚(満田・森島)が自身のスタートポジションから縦横無尽に動くことでパスを引き出し、1,2列目のポジション移動によって発生するスペースに3列目から川村も前線に顔を出した。例えば以下のような形だ。
この形を推し進める中で結果として深刻な得点力不足に陥った訳だが、理由としてはセンターフォワードがサイドに流れることで最終局面で得点を取れる選手がゴール前に居ない状況が発生した点や、完全に守備に引かれた相手には前方にスペースが無く強みの走力が生かすことができず押し込めはするが崩せないシーンが多くなった点がある。
可能性低いクロスに稼ぐシュート数
「あとは決定力だけ」遠ざかる核心
シュートに至る過程の追求
それこそが上昇に重要
では今シーズンの局面②ボール保持はどんな感じ?というと昨シーズン終盤に身に着けた5レーンアタック風味が見られるかもしれない。
「風味」としたのは両サイドのウイングバックがトップ化しないことも多く5トップに見えるシーンが少ないこと。(5トップでは両端2枚の攻撃力が重要だと思うがそこに守備的な選手を置く。元CBの中野がドリブルでの突破力を上げてきていることと、左に小原という秘密兵器がいることは隠しておこう。)
この風味遂行には、かなり極端だがデフォルトの持ち場から離れ過ぎないことがポイント。前述した「持ち場を離れて動く攻め」があるからこそ際立つだけなのかもしれないが、相手ディフェンス4枚に対してフォワード5枚の「数的優位」が既にあるのだから担当レーンに留まり、ボランチ・サイドのセンターバックをを交えボールを繋ぐことができれば相手にとっては一番の脅威だろう。
そして昨年後半戦で加入した加藤とマルコスが持ち場のレーンに留まることのできる選手であったからこそ風味攻撃が成立するようになったと言える。そのインサイドハーフで起用される2人の質とは、まず加藤は身体の使い方が上手く強さもある、マルコスはテクニックとポジショニングが良い。そして復調したピエロスが中央で堂々と構える。マルコスは怪我で開幕には間に合わないことは残念ではあるがその分大橋には期待したい。
因みにこれまでの図中の相手「赤」は開幕戦の浦和レッズをイメージしてみた。
最後に少し試合展開の妄想をしてみよう。
開幕戦、新スタジアム、HOMEゲーム、やる気ビンビンの広島は前半開始とともにハイプレスを仕掛ける。開始して暫くは浦和のサイドバックはタッチライン際まで開いてピッチを広く使うビルドアップを行う。つまり広島的にはマークが特定できること(更に近くに相手がいること)で「ハイプレス」が掛けやすい状況となる(最初にUPした図)。浦和は昨年の埼玉での試合同様にDFラインからの組み立てを放棄(=自陣で奪われてのショートカウンターリスク回避する)し、西川を使いながらロングキックを多用し広島DFの背後のスペースとチアゴサンタナに当てる等の個人の局地戦に持ち込もうとする。J屈指のFW陣とDF陣のマッチアップ。浦和は左サイドバックの渡邊が内側にポジション取りビルドアップに参加。広島のハイプレスが空転することが増え徐々に試合は浦和ペースに。ウイングが外に張り出す浦和に対して広島のウイングバックが対応し5バック気味に守る展開が続くが。
続きは明日の試合で(もう今日じゃん!)。